生成AIエージェントが刺さる業務課題を探そう!
こんにちは! AIエージェントに捧げた一年を過ごした太田(https://x.com/ottamm_190)です。
年末のエージェント記事の第三弾です。
第一弾→ Weekly AI Agent News!から見えたAIエージェントの現在地 - 襖からキリン
第二弾→ AIエージェントビジネスの現状と今後の考察 - 襖からキリン
今年は業務時間外でAIエージェントのニュースや論文を発信してきました。論文リストもまとめています。 興味があればご覧ください。とりあえず3月末までは更新します。
さて中身に入ります。記事のタイトル通り、生成AIエージェントが刺さる業務課題を探す道標を紹介します。
DX部門や受託コンサルの方をメインに、PdMの方も参考になると思います。
そろそろ会社の上の方から生成AIエージェントの事例を集めさせられ、戦略を考えさせられたり、社内の事例を出すように言われたりしていますか。
そもそもエージェントが刺さる課題を探そうとも、自ら歩み寄ってくることはありません。 ケーパ資料やデモ、事例を持っていろんな方に説明をして課題を探しにいく必要があります。
無闇に探すより少しはアテがある方が議論しやすいです。 この記事がそんな課題を探すきっかけや助けになると書いた甲斐があります。
(12/24に追記です。)
記事の前提として、第二弾で書いたように、生成AIエージェントは世の中で自動化したいことの一部で有効活用できると考えています。多くは業務フローに沿ってプロンプトを繋げたワークフローで解決できると考えています。それでもエージェントを何か活用したいという場合に、役立つ内容をまとめているつもりです。

その前提でご覧ください。
- あなたは生成AIエージェントでどんな成果を出したいですか?
- 生成AIエージェントの特徴を振り返る
- 生成AIエージェントが取り組むタスクの抽象度を誤ってはいけない
- エージェントが刺さる業務の特徴7選
- 逆に刺さらない業務の特徴とは
- まとめ
あなたは生成AIエージェントでどんな成果を出したいですか?
多くの企業がエージェントを取り組もうと来年さらに動くでしょう。
そんなとき、あなたのモチベーションはどこにありますか。
- 先行事例にある問題設定でも現場に受け入れられ、確実に効果があることを実感したい
- 競合他社にまだないエージェントの応用事例をいち早く生み出したい
- 技術的に何か優れたエージェントを開発した事例を作りたい
この記事は今までにない応用事例を作りたい方向けに、どんな業務の特徴があれば適応できそうかを掘り下げます。
先行事例に習って確実にエージェントに取り組みたい場合は、来年の春か夏まで待てば、早期取り組み層からPoCの結果が公開されると思います。 少しでもエージェントを触ってみたい場合は、MicrosoftやGoogle、Amazonなどから提供されるエージェントビルダーを活用するのも手です。
生成AIエージェントの特徴を振り返る
生成AIエージェントは、LLMをコアに、タスクの計画立案→外部ツールを使った実行→結果を元にした自己修正を繰り返しながら、目的のアウトプットに近づいていきます。
従来型のQ&AチャットボットやRPAは、事前定義されたルールやシナリオに沿って動くことが一般的でしたが、生成AIエージェントは推論能力を活用して能動的に方針を修正できる点が大きく異なります。

ヘルプデスクの事例で学ぶAIエージェント - Speaker Deck
従来のようにファインチューニングのような学習が必要な場合、データの整備・アノテーションに工数がかかりました。また解くタスクも基本的に一つで、別用途で横展開するときは再度学習が必要でした。
しかし、汎用的に学習されたLLMをエージェント化するアプローチでは、一定のプロンプトとツールを変えるだけで多彩な課題に取り組むことができます。 汎用と特化のトレードオフはありますが、横展開の可能性が従来の学習とは違います。
最後に生成AIエージェントは、外部API、RPAツール、チャットツール、データベースなどと連携できます。こうした“ツールの組み合わせ”が重要な場面ほど、エージェントは価値を発揮しやすくなります。
※ エージェントは各社で様々な定義がありますので、自社の定義や特徴と合わなくても気にしないでください。根幹の技術は同じですが、その根本技術が一つではないので、自社の強みに活かすようにエージェントの重視する観点を強調すると各社で説明が変わってきます。
以下の最近出たAnthropic のブログのエージェントの考え方に私は近いです。
Building effective agents \ Anthropic
生成AIエージェントが取り組むタスクの抽象度を誤ってはいけない
細かいことを話す前に、大前提としてエージェントが扱うタスクの抽象度を誤ってはいけない話をします。
エージェントを使うビジネスで一番変わったのは、扱えるタスクの抽象度です。 この理解を間違えると、不必要なときに無理してエージェントを使うことになるか、エージェントを作ろうとしていつの間にかエージェントではないものを作っています。
よくあるのは、受託コンサルで顧客の業務課題を詳細に聞いて、その業務のためだけに作れば作るほど、目的ごとの複数のプロンプトを繋ぎ合わせた事前定義のワークフローになっていくことです。
いつの間にかエージェントの強みだったタスクの抽象度が低くなり、それはもうLLMを使った特定の業務代替用のワークフローじゃん!になります。
生成AIエージェントは自ら業務の解決プロセスを思考して実行するぐらいの気持ちでいいです。
エージェントを形作るワークフローは思考回路みたいなものであって、業務の実行ワークフローとは別ものです。
その思考の方向性をプロンプトで縛り、業務特化にしていくイメージです。
一概に全てがそうではありませんが、6割くらいはその思想です。 残りにマルチエージェントの思想で、業務の職務担当者や目的レベルでエージェントと呼び、業務ワークフローに合わせてエージェントを繋ぎ合わせる思想と汎用的な設計でオーケストレーターが適切な役割のエージェントを選ぶ思想があります。
タスクの抽象度が高いほど「エージェントらしさ」が活きる
既存のGoogleやOpenAI の既存のエージェントの応用事例はどれもタスクの抽象度が高いです。 どんな事例かというと、データ分析、ソフトウェア開発、Webナビゲーション、Web情報検索による質問応答です。
Introducing canvas, a new way to write and code with ChatGPT. | OpenAI
Google introduces Gemini 2.0: A new AI model for the agentic era
共通するのは、どれも入力にどんな質問や指示が来るか事前に予想できないので、その都度行動方針を決めるレベルで抽象度が高いタスクなのです。
タスクの抽象度を理解するために抽象度の低い例から高い例を紹介します。
抽象度 低:ある定点観測しているアンケート分析のためのエージェント
データ分析タスクで一番抽象度が低い例です。事前に分析項目も決まって、報告する形も定まり、事前定義のワークフローになりやすいです。 受託コンサルで特定の部署向けに案件を受注するとこの抽象度の案件が多くないでしょうか?抽象度 中:任意のアンケート分析のためのエージェント
データ分析タスクの抽象度を一段あげました。利用満足度のアンケートや市場調査のアンケートなど目的ごとに形式や分析プロセスが異なり、計画する必要が出てきます。社内向けエージェントを全社展開で利用してもらえるのはこのレイヤーではないでしょうか?抽象度 高:テーブルデータ分析のためのエージェント
更にタスクの抽象度をあげました。入力がアンケート以外に売り上げデータや勤怠データなどが想定され、分析方針も都度変わり、難易度が高いです。ここまで上げると今の技術で現場で満足いく結果が出るか不安ですね。
基本的にタスクの抽象度が上がるほど、エージェントが自ら計画をして進めます。そしてワークフローが事前定義されていないので、自分でツールを選ぶ必要があり、間違いがあれば自分で気づいて直す必要が出てきます。
業務特化のエージェントを作るのは、ちょうど真ん中の「任意のアンケート分析のためのエージェント」くらいのイメージです。 このレベルが現状開発するならちょうどいい難易度だと考えています。
タスクの抽象度を高める視点は、一つの部署だけでなく、複数の部署で同じようなことをしているかです。 このような業務は、解決策の方針は似ていますが、細部はその都度、各部署に調節する必要があり、結果的にタスクの抽象度が一段高くなります。
エージェントが刺さる業務の特徴7選
エージェントが扱うタスクの抽象度は先ほど説明しました。 ここからが本題です。どんな業務の特性や構造があると生成AIエージェントを活かしやすいかを紹介します。
1) 課題はある程度明確だが、答えが一意でない
解決策が複数ありえて、最終的には何らかのアウトプットに落とし込む必要がある業務です。
例)新規プロジェクトの企画立案、製品のデザイン案作成、市場調査からの新サービスアイデア創出
生成AIエージェントは、複数の候補をブラッシュアップしながら比較検討するプロセスを自動で行えるため、こうしたアイデア創出フェーズで特に強みが発揮されます。
2) 業務成果物のバリエーションが多く、都度カスタマイズが必要
業務成果物(レポート、提案書、仕様書など)がテンプレート一辺倒でなく、毎回異なる要望や形式に合わせる必要がある業務です。
例)顧客ごとに異なる用途・要求に合わせて営業資料の作り変え
従来は各種パターンを学習させるのにコストがかかりましたが、生成AIエージェントであれば、ヒアリングした要求をもとに過去の事例を参照しながら文章構成をすぐに生成可能です。汎用性の高さを活かし、都度のカスタマイズやバリエーションに対応できます。
3) 業務の中に複数ツール・データソースを利用する
エージェントが外部ツールを呼び出しながらタスクを進める必要がある業務プロセスです。
例)データ分析ツールを使って売上予測→結果から見込客リストを生成→メール自動送信ツールで一斉連絡
生成AIエージェントはAPI連携やRPAのようなツール利用を組み合わせてタスクを完了できるため、マルチツールを活用したクロスオペレーションでメリットを得やすいです。
エージェントが、「どのツールをいつ、どのように活用すべきか」を自律的に判断しつつ、結果を評価し再度計画をアップデートすることが強みになります。
注意が必要で、先ほどのタスクの抽象度の話のように、特定のプロセスのためだけに作る場合は事前定義のワークフローになってしまいます。数あるユーザーの依頼の一つが例に挙げたオペレーションだったという理解が正しい認識の一つです。
4) “試行錯誤”や“自己改善”が不可欠なPDCAサイクル
PDCAなどの反復的な改善プロセスを通じてブラッシュアップしていく業務です。
例)A/Bテストを繰り返すマーケティング施策、顧客問い合わせに応じたFAQ自動生成、市場調査やSNSトレンドを参照しつつ複数のビジネスモデルを検討した新規事業アイデアの創出 、実験や研究の自動化
計画→実行→結果評価→修正というPDCAサイクルを生成AIエージェントが回します。
5) 情報収集・要約・分類といったナレッジワークが多い
ドキュメントやテキストベースでの大量情報を分析・要約し、次のアクションを提案する業務
例)膨大な社内文書や市場レポートを読み込み、要約や重要ポイントの抽出、既存ナレッジの更新
- 問い合わせ履歴・FAQ・製品マニュアルを横断的に照合し、回答テンプレートを自動生成→異なる問い合わせにも応用
- 膨大なレポート・議事録・特許文献などを読み込み、要点をまとめて各部署へ最適な情報を配信
- 消費者の声やトレンドをエージェントが要約し、次のキャンペーン施策を提案
単なる要約に留まらず、要約した情報を踏まえて実際のアクション(メール送付、提案書生成など)まで繋げられるのがエージェント活用の強み。
6) ルーチンワークだが例外が多く、対応ルールが複雑
ルーチン化はしていても、ルールや条件分岐が多く、作業手順がやや複雑なプロセスを持つ業務です。
例)契約書のチェックフロー、与信審査や請求処理のフロー、在庫データ更新と発注連携
- 契約書チェックフロー: テンプレートはあるが、案件によって特約や法令準拠条項が違うため、エージェントが文章を解析し修正点を提案
- 在庫管理と発注: 商品カテゴリごとに在庫基準が異なり、季節変動やキャンペーンに合わせて発注判断が変わる
シンプルな自動化で対応できる範囲を超えて、イレギュラー対応や例外判断が求められるケースです。
完全に固定化されたフローではRPAが適任ですが、複数の条件分岐や例外的処理がしばしば発生する場合は、エージェントがルールを“言語的に”理解し動的対応できます。
7) 複数ステークホルダーがレビュー/承認し合うワークフロー
業務成果物に複数の意見をもらったり、承認されるまでに様々な役職のレビューが存在する業務です。
例)営業や上長による提案書レビュー、エンジニアやビジネスチームによる仕様書レビュー、人事や法務、総務による規程更新、広報記事
レビューのある業務はエージェントの自己修正の観点に採用されやすく、エージェントらしさが眠っています。
ロールプレイング形式で、「ユーザー視点」「開発視点」「経営視点」などの複数エージェントが、それぞれが意見を出すことで、提出前の段階でさまざまな観点での指摘をまとめた改善ができます。
ここまで紹介してどうでしょうか。自社の業務や相談された中で該当しそうなものはあったでしょうか。
逆に刺さらない業務の特徴とは
一方、生成AIエージェントの強みを活かしにくい、あるいはリスクが大きい業務も存在します。 ここではその典型例を挙げ、導入を慎重に検討すべきケースを解説します。
1) 完全な定型作業やルールベースで完結する
明確なルールと定型的な手順さえ守れば、ほぼ自動化が完成するような業務です。例えば、請求書発行システムから金額をコピーして会計システムにペーストするフォーマット変換作業など極めてシンプルな繰り返し作業や受領メールに添付されたPDFを毎回決まったフォルダに保存するようなデータ移行する作業です。
2) エラーが一切許されないミッション・クリティカルな領域
極めて高い信頼性が求められる業務です。 例えば、振込間違いが起きれば大きな損失や社会的混乱を招く金融機関の基幹決済システムや運行ダイヤに誤差が出ると大規模な混乱に繋がる航空・鉄道の運行管理などです。 厳密なルールと制御が必要な業務には不向きです。 エージェントはおろっと失敗したり、行動の積み重ねはエラーの重ね合わせになりかねないので、失敗がある程度許容される必要があります。
3) 人間の感覚の言語化が難しい
例えば製造現場の物の肌触りや反響音から判断する熟練技能や、ユーザーの生の反応をリアルタイムで感じ取る接客や面接など、五感に依存する業務です。熟練技能も数値化や言語化を進めなければ始まらず、表情や声色も動画像と音声指示で理解できるように見えますが、日本人は表情や態度に感情が現れにくいので、会話の流れの感覚的な空気感を理解するのはチャレンジングです。
4) ゴールがまったく定まっておらず、評価基準自体が存在しない
目的や指標が不確定で、成功条件が全く設定されていないプロジェクトのように「なんとなく新しいことをしてほしい」「大枠は自由でいい」と言われ、評価軸もないケースです。 LLMは目標や質問内容に対して応答する仕組みのため、“成功の定義”がないと試行錯誤がループしてしまう可能性があります。
まとめ
生成AIエージェントは「タスクを自分で考え、外部ツールを使って実行し、結果を見て再計画する」という存在です。 一方でどこでも導入すればよいわけではなく、業務の抽象度や複雑性、イレギュラー対応の度合い、ツール連携の必要性などを見極める必要があります。
生成AIエージェントは、明確なゴールに向かいつつ複数の解や手順があり得る業務や、外部ツールを組み合わせてPDCAを回す必要がある業務で特に効果を発揮します。
DX推進や新規事業開発の現場でも、2025年ますますエージェント活用が加速するはずです。ここで挙げた要点が“課題を探すきっかけ”になれば幸いです。エージェントの強みを活かした本格的なビジネス変革、来年ぜひチャレンジしてみてください。
採用以外でAIエージェントの相談があれば、X( https://x.com/ottamm_190 )にDMして頂ければ可能な限り対応します!